ぐるぐる、ぐるぐるとバーナビーの思考が巡る。
最初は価値観の違いから相容れない相手だと思っていたはずだった。
なのに気が付けばいつのまにか心の中に勝手に住み着かれてた。
迷惑だ――と思えなくなったのはいつ頃のことだったかさえ分からずもどかしさがバーナビーを攻め立てる。
その事に気がついたのはちょうど三ヶ月前のことだったとバーナビーは記憶している。
そして今日、確信してしまった。体が彼を求めていることに――。
もともとバーナビーは女性特有のモノが来る2、3日前になると体が興奮状態に入ってしまう体質だった。
いままではトレーニングすることで熱を発散させてきた。
なのに、だ――。
鍛えすぎだぞ、と虎徹に言われてしまうまで体を酷使しても、冷たい態度で彼にあたって距離と取ろうとしても相変わらずのお節介さで意味を成さない。
体臭と香水が入り交じった彼独特の香りを嗅いでしまえば体も思考すらもストップしてしまう。
自分の思い通りにならなくて、もどかしくていらいらする。
そのたびに心配する虎徹は大きな手のひらをバーナビーの額に押し付け、熱を測ろうとする。
もう重症だ――とバーナビーは心のなかで舌打ちしながらため息をそっとこぼした。
今だって出動要請直後の熱を帯びている虎徹の体から漂う香りにバーナビーの体は反応し、それを隠そうと奥歯を噛み締めながら顔を顰めるしかない。
悟られたくない、という思いと浅ましい己を知られたくないという思いが交差し、バーナビーの胸を絞めつけてゆく。
なによりも辛いのはどんなに欲しても叶わないことを聡いバーナビーは気がついてしまっている。同時に諦めてさえいるのだ。
相棒として一緒に居られるけれどそれ以上は無理なのだと――左手にはめられた指輪が物語っているから。
けれど些細な触れ合いに胸が痛むのはもう仕方ないのだと思うようにした。
頭で考えても痛みが消えるわけではないのだから。
だったらいっそ、辛いと思う気持ちも泣きたいと思う気持ちも押し込んで、胸をはって姿勢を正す。
いつもの生意気だと言われる自分自身で在り続けるために――
バーナビーはまだ知らないでいる。彼に向きあってちゃんと顔を見ようとしないから。
ただ労りの表情を浮かべているだけとは言えない、優しくも男臭い表情を虎徹が浮かべていることに。
そしてバーナビーが落ち着くのをじっと待ち続けていることにも――。
こっそりと虎徹は考えてた。
早くバーナビーに気がついて欲しいとも、同時にもう少しこのままで居たいとも。
バーナビーの全てを優しく包み込むように受け止めてくれる場所はすぐ側にあるのだ、ということを――。
優しく穏やかな眼差しの中にひっそりと隠したまま、今日も虎徹はバーナビーに笑いかけ、彼女に触れる。
バーナビーから無意識に漏れてしまう好意を見たいがために時には意地悪く距離を縮めながら。
〜 END 〜
【 初出:2011/08/20−Twitlongerより 】