暗く分厚い雲が重さに耐え切れず、その内に秘めたものを荒ぶるままに地表へと落としてゆく。
綺麗に整列させられた人工物の上に、より美しく咲き誇るように手を加えられた草木の上に。そしてそれらを作り出した人々の上にすら平等に。
ほんの少し先の景色さえ雨というな分厚いカーテンに覆われ見ることすら出来ない。
等間隔に置かれた街灯でさえぼんやりとした明かりでしか認識出来ず、普段とは違うシュテルンビルトの様相は幻想的な世界へと姿を変えた。
まるで今居る場所が通い慣れたいつもの道ではないのかもしれない、と思えるほど劇的に。
そんなな中、虎徹は傘もささずに一人夜道を歩く。
帽子を左手で抑えながら見上げた空はどこまでも暗く、闇に囚われたままだ。
「泣いてんな……」
虎徹は湧き上がる感情を持て余し、立ち尽くす。
強く、強く振り続ける雨はまるで見えない刃のように虎徹の心を貫いてゆく。
抜群の切れ味を誇る日本刀のように鮮やかに。
「ほんと、いてぇなぁ」
激しく打ち付ける雨も痛いが、それ以上に心が痛くて悲鳴を上げそうだった。
酒を浴びるように飲めば少しはマシになるだろうか――? そんなことを思いながら佇み、目を閉じた。
虎徹のまなじりからこぼれ落ちたのは雨なのか、それとも涙なのか、――本人にすら分からない。
けれどこのところ度重なる出動要請発令と、疲れているはずなのに眠ることの出来ないジレンマが確実に虎徹の思考を鈍らせていた。
しかしソレとは対照的に虎徹の感覚は鋭利に研ぎ澄まされ、血が沸き立つほどに好戦的な感情に支配されそうになる。
「やべぇなぁ……」
箍が外れかかっているせいか、心の奥底に閉じ込めていたはずの深い闇が虎徹の中で暴れ始める。
虎徹の本性とも言える獣が喉元を喰らい尽くそうと狙いを定め、低く唸るのだ。
闇の中で研ぎ澄まされた牙が浮き彫りに見え、虎徹は深い溜息をついてしまう。
「このままじゃセカンドまで行きそうだな。どーすっか……」
〜 To be continue? 〜
【 書いた日:20011/06/04◆ABITIEYシリーズより 】